JIA環境建築賞

第20回環境建築賞 総評

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 近年の気候変動の加速は、2019年も甚大な被害をもたらし、多数の被害者を出した自然災害が相次いだ。8月の九州北部豪雨や9月上旬の関東広域を襲った台風15号などをみても、世界的に見ても日本は災害多発国のトップであり続けている。1984〜2013年の自然災害において、災害死亡者は世界の1.5%にとどまるものの、自然災害で発生した被害金額は世界の17.5%にも上る(*1)。また、日本の化石エネルギーへの依存体質は、先のCOP25においても不名誉な「化石賞」を受賞するなど、日本の今後の気候変動対策についても注目を集めている。このような状況の中で、JIA環境建築賞は創設以来今年で第20回の節目を迎えた。
 JIA環境建築賞は、一時期環境部門を内部に持つ大手事務所からの一般部門への応募が大多数を占め、住宅部門への応募が寡少な時期があったが、住宅については応募時に環境シートの提出を求めないことにしたことが功を奏し、近年は特に質の高い提案の応募数の増加が目立つようになってきた。4年前にJIA環境建築賞の委員長を引き継いだ時に、「自然と共にある生活」というテーマを掲げ、環境負荷の多寡に縛られず、特に地方独自の文化・風習や、精神的・体感的な豊かさを重要視し、次世代のライフスタイルへ向けた提案も期待した。今年の入賞作をみると、まさにその成果がはっきりと見られたと思う。
 住宅部門では、審査員の最終投票がほぼ同数ではあったが、審査員での公開協議の結果、「本部町の新民家」が最優秀賞、「淡路島の住宅」が優秀賞、「重箱の家」は特別賞となった。「本部町の新民家」は、沖縄での採石乱開発によって失われた自然を林業によって取り戻すこと、また沖縄の気候風土に適した新しい木構法と亜熱帯地方での開放的な環境住宅のあり方を発案しており、そのユニークさと共に次世代のライフスタイルへ向けた提案として高く評価された。「淡路島の住宅」は、瀬戸内海に面する高台の土地の環境的なポテンシャルを最大限引き上げることによって、温暖な地域での開放型ZEH住宅のプロトタイプをつくった。
 3,000枚の淡路瓦のダブルスキンでの日射・通風の制御、地熱による全館冷暖房、太陽熱によるプールの水温差を利用して全給湯エネルギーを賄うなど知的な環境制御手法は他に類をみない高品質な作品である。加えて、神戸都心からの時間的な距離を考慮した利便性の高い環境住宅のあり方にも敬意を表する。「重箱の家」においては、建築の構成が雪国での居住空間のあり方を見直し、居心地の良い空間に見事に繋がっている。寒冷地では床暖房などによって、均質な温度環境をつくることが定石であったが、床暖房は土間に限定し、家中央に設置された薪ストーブに家族が集まり、中空に浮かんだ寝室を暖気が包み込む仕組みは秀逸である。ワンルーム空間に薪ストーブという単純な構成でここまで複雑な効果をもたらした。審査員の総意として特別賞が与えられた。
 一般建築部門では、「もりのしんりょうじょ」「和光市立下新倉小学校」が優秀賞に選出された。両作品共に、地方独自の文化・風習を丁寧に読み込みながら、特に居心地の良い空間を創り出すことに成功している。住宅スケールの「もりのしんりょうじょ」は、木材の自然乾燥期間を見込んだ調達方法から大工の選定まで配慮していること、医療施設での高窓を利用した直接の風を感じない自然通風を提案、保育所の併設など新しいプログラムにも取り組んでいる。「和光市立下新倉小学校」は、資源リサイクル置場が隣地にあるという負の周辺環境にありながら、子供たちの心象風景ともなる木質系素材をふんだんに使用した森のホールの提案、トップライトからスイミングプールへのダイレクトゲイン手法など新しい試みが高く評価された。
 今年の環境建築賞は、単純に高気密・高断熱をめざす環境建築の流れとは根本的に違う新しい設計手法が評価され、これからの環境建築の指針として価値のあるものと思われる。今後の新しい環境建築賞制度の見直しも楽しみである。

 (*1)自然災害多い日本:M6以上の地震、被害額は世界の2割弱 https://www.nippon.com/ja/japan-data/h00549/

審査委員長 安田 幸一