JIA 25年賞・JIA 25年建築

JIA25年賞受賞作品 登録No.238

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沖縄県公文書館

沖縄県公文書館
竣工時
沖縄県公文書館
現況 撮影:川澄・小林研二写真事務所 中村隆
 
設計者: 株式会社国建・株式会社エー・アール・ジー共同企業体
建築主: 沖縄県
施工者: 株式会社屋部土建、有限会社大協建設、与勝建設株式会社、株式会社光南建設、株式会社中村組 共同企業体
竣工年: 1995年3月
所在地: 沖縄県南風原町
講評:

 沖縄県の公文書館は、県立公文書館としては圧倒的な規模(延床面積7750平米強)を誇る大建築で、この規模は、当時の大田昌秀知事の記録保存に対する強い意志を反映したものと言われている。もう一つ、この建物は沖縄の建築家國場幸房が初めて瓦を採用した建築としても知られるが、関係者によれば、國場自身にとっても大きな転換であった様子である。沖縄では、台風対策から、建築の鉄筋コンクリート化が進んでいたこと、特に住宅では木造の時代から風雨への備えとして赤瓦の継目を漆喰で固める構法が広く普及していた歴史的・環境的経緯から、鉄筋コンクリート造+赤瓦葺漆喰固めという構成が、景観としても沖縄の人々に馴染深いものとなっていたが、こうした背景が手間隙の掛かる屋根の長期保全計画への県民理解を容易にし、その技術の継承に貢献しているとも指摘されている。この点を、今、深く論じる紙面を持たないが、ここでは住宅の営繕技術が極めて保守的で堅牢な裾野を持つ事実を指摘して先に進みたい。
 建築の耐用年数をどの程度に設定すべきか、或いは建築の寿命は実際どの程度なのかについては常に議論になるが、私自身は、継続的な営繕が実施されていれば、増築や減築或いは補強の必要に迫られることはあっても建替えが奨励される必然性はないと考えるが、一方で、設備の更新を建替え契機としたり、資金難から記念塔の解体が取り沙汰されたり、逆に建替えを模索する古いマンションが資金難故に営繕の対象となったりと複雑な事態も招来している。こうした事実に鑑み、ここでは本来、最も建替え契機から開放されているはずの「公文書館」を敢えて取り上げる理由を述べておきたい。まず、冒頭でも述べた通り、施主である沖縄県がその規模に県の将来を見据えていること、次に運営を預かる文化振興会の下に資料整理の為に日々地道な作業に取組む多くの人々が参集していること、それを信頼し訪れる見学者や閲覧者が存在すること、そして、建築的には、ここが本審査に於いて最も重要な点であるが、鉄筋コンクリート造+赤瓦漆喰押えという構成が沖縄の現代住宅の主要な構法であること、勿論、鉄筋コンクリートの信頼性確保の為の努力や手間隙の掛かる赤瓦屋根の営繕に対する理解が、当時、広く存在したか否かは不明であるが、県民規模で存在すると、恐らくは、設計者が考えていたと推察されることの4点をもって、敢えて、授賞に値するとの判断に至った。

  (内田 祥士)