JIA 25年賞・JIA 25年建築

JIA25年賞受賞作品 登録No.239

※ 写真・文章等の転載はご遠慮ください。

輝北天球館 及び 輝北うわば公園内の木造建築群

輝北天球館 及び 輝北うわば公園内の木造建築群
竣工時
輝北天球館 及び 輝北うわば公園内の木造建築群
現況 
 
設計者: 株式会社高﨑正治都市建築設計事務所
建築主: 鹿児島県鹿屋市
施工者: 輝北天球館:五洋建設・春園組特定建設工事共同企業体
木造建築群:村岡工務店
竣工年: 輝北天究館:1995年7月、木造建築群:1994年
所在地: 鹿児島県鹿屋市
講評:

 輝北天球館は、絶景の中に建っている。眼下に錦江湾が屈曲し、桜島がそびえ、北に霧島連峰、東に志布志湾が一望できるこの地に、バブル期に全国を巻き込んだリゾート構想推進を背景にして、4期連続で「日本一星がきれいに見える町」になったなどの理由から、九州最大級の天体望遠鏡を有する施設が計画され、九州で初めて1992年に実施されたプロポーザルコンペを通じて、鹿児島県出身の建築家・高崎正治の案が選出され、輝北天球館は1995年に、それが建つ輝北うわば公園内に位置する3棟の木造建築群が1994年に竣工した。
 特筆すべきは、何よりもその造形だろう。輝北天球館における斜めに突き出たラグビーボール状の物体の内部は、階段席が設けられた研修室となっているが、その空間の形状は、外から目にした時の形と変わらない。3本の斜めの柱は室内を貫いて、殻を破り、最後は天に呼びかける花のような形に編まれて、遠くからも目立つシンボルである。周辺部の複雑な造形は遊歩路であって、来訪者が楽しみながら、この地の360度のパノラマに親しめる効果をもたらしている。8本の柱で支えられた展示室の独特の形も、天体観測という機能にもとづいた上部の半球ドームと違和感なく溶け込んでいる。木造建築群は、それぞれの命が大地から芽吹いたような姿だが、形態は構造と無縁ではなく、また外観が内部空間に率直に対応している。
 竣工した作品は、直後から大きな話題を呼んだ。25年を経た今、周辺にない名所となり、市民が日常的に訪れる公園の景観として定着し、地域社会に貢献する存在となっている。
 成功の理由は、造形の説得力にあるのではないだろうか。一つには、その形態が機能や構造と無縁でないことに由来する。加えて、外観と内観が相応した、いわば内側に入れる彫塑のような作風が真実味を増している。造形が加飾ではない。その感は、大地のエネルギーが今も地球を描き変えていることを直観できる絶景と共に目にした時、いっそう強い。
 輝北天球館および輝北うわば公園内の木造建築群は、宇宙(コスモス)を観察するという目的、この立地、地元に生まれてコスモロジーの思想を育んだ建築家の三者が邂逅し、場所の意味を顕在化させることに成功した建築である。その価値は普遍的だが、同様の邂逅は、1990年代後半の日本における地方公共建築に対するハコモノ批判や建築思潮の転換などの後では想像しがたい。だからこそ今、「JIA25年賞」を通して、この先のさらなる維持・活用を熱望するものである。

  (倉方 俊輔)