JIA 25年賞・JIA 25年建築

JIA25年賞受賞作品 登録No.243

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防府市公会堂

防府市公会堂
竣工時 撮影:恒成一訓
防府市公会堂
現況 撮影:針金建築写真事務所
 
設計者: 株式会社佐藤総合計画
建築主: 防府市
施工者: 鴻池組(竣工時)
熊谷組・澤田建設・山陽建設工業協同企業体(改修)
竣工年: 1960年9月
所在地: 山口県防府市
講評:

 佐藤武夫の設計により、60年前に建設された公会堂が、大規模改修を経てリニューアルオープンを果たした。市内では20年前、別の敷地に音楽ホールが完成しているが、こちらの公会堂も長くこれから使われ続けることとなる。
 建物は前庭にファサードを向ける。駐車場に転用されることなく、現在まで庭園として維持されているところは素晴らしい。正面から見ると、水平に延びたボリュームがピロティで持ち上げられている。その左側には細い櫓状の構造物が垂直に立ち上がり、建物と対比を見せる。もともとは時計塔だったが、時計は外されて久しく、機能的には無用である。しかし、塔は佐藤武夫の建築においてトレードマークともいうべき存在であり、これが残った意義は大きい。
 外装はコンクリート打ち放しで、随所で見られる杉板型枠の跡が美しい。側面に回ると、客席の上に架かる折板状の屋根がわかる。地方の文化施設を限られた予算の中で実現していくために、モダニズムの美学と挑戦的な構造技術を採り入れたことがわかる。
 中に入ると、見どころはまず2階のホワイエだ。全面のガラスとルーバーを通して光が差し込む空間は、見る者にすがすがしさを感じさせる。ホール内部は波板スレートを並べた天井が斬新だ。今回の改修で音響性能の向上が図られ、細かな調整は施されたものの、基本的なデザインは踏襲されている。佐藤武夫は音響の研究でも名高かったので、この点もよろこばしい。
 この建築は、戦後のモダニズムによる公共施設の模範解答と言えるものである。使い続けるには、耐震性の問題や機能上の不足を補うために大きく手を入れなくてはならないが、モダニズムの建築は躯体をそのまま現すことを信条としているだけに、見た目を変えることなく改築することは難しい。この改修でもファサードのルーバーや外階段の手すりなど改変を受けた箇所はいくつかあるものの、無骨な鉄骨による補強など、全体の印象を損なうところは見られない。今回の佐藤総合計画による改修は、設計事務所の創設者に対するリスペクトが隅々まで行き届いたものとなっている。ほぼ同時期に建てられた長崎市公会堂や渋谷公会堂といった公会堂建築が次々と姿を消していったなかで、その存在価値はますます高くなっていくだろう。

  (磯 達雄)